それはPPTQの準々決勝で起こった。

友人のおすぎはエスパーミッドレンジを使用し、対戦相手は緑単ガルタt黒。Game1は長期戦の末おすぎが勝利し、サイドボードを挟んだGame2。おすぎの場には黎明をもたらすものライラ、対戦相手の場には生命の力、ニッサ(忠誠度1)。

相手は翡翠光のレインジャーを唱え、1回目の探検効果で公開されたのは大災厄。ライラしかコントロールしてないおすぎにとっては反撃の糸口にされ得るカードで、相手は勿論トップに置くことを選択。このままおすぎがクリーチャーをプレイしない場合、戦場を制圧しているライラが追放されるだろう。ニッサの+1能力で土地をクリーチャー化して攻撃すると、相手はターンを返した。

おすぎはライラでニッサを攻撃して墓地に送るが、生物呪文を唱えることができず、相手にターンを渡す。通常だとこのままフイニッシャーを失なってしまう…となるところだが、おすぎは平静を保ってプレイできていた。なぜならおすぎの手札には菌類感染が存在していたからだ。


Fungal Infection / 菌類感染 (黒)
インスタント

クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-1/-1の修整を受ける。緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを1体生成する。

本来緑単に対しては大型生物の根本的な対策にはならないものの、ラノワールのエルフ、マーフォークの枝渡り、翡翠光のレインジャーまで触れることが可能であり、緑単にしてはやや大振りなウルザの後継、カーン等をサイドアウトし相手の動きに合わせていくプランのために2枚程度サイドインすることにしている。本来は赤単系の初動を効率よく捌くためのものであり、「1マナでバリスタX=2と同効率」「インスタントの二股の稲妻。実質モダン級」と言いながらボーマットを潰しつつ苗木を生やしケンラとの相討ちを取ることができる。

大災厄をプレイされる前に歩行バリスタ等をプレイされる可能性もあるが、公開した大災厄を含めて相手の手札は2枚。Game2の時点でサイドボードの菌類感染を相手に見せてはおらず、また、相手の土地は6枚しかないため仮に持っていてもX=1程度で置いて大災厄をプレイする可能性は低い。相手は大災厄を追放モードで唱え、対応してインスタントタイミングで出てくる苗木。序盤のやり取りに菌類感染を使用しなかったことが逆に功を奏し、苗木をライラの身代わりにすることでそのままダメージレースを制するだろう…自分はそう思っていた。

大災厄を引いたターン、相手は大災厄を唱える前にまずは、と翡翠光のレインジャーで攻撃を宣言した。

その時、おすぎはおもむろに黒1マナを寝かした。

「ライラを対象に菌類感染を唱えます」

なぜ、ライラに菌類感染を?何をやっているんだこいつは。自分は瞬間的にそう思ってしまった。しかし数秒後、その認識は誤っていることを悟った。相手のハンドは一枚だが、それが顕在的防御である可能性を考慮したプレイだったのだ。

おすぎがライラをフルタップでプレイした返しでニッサでクリーチャー化した土地が攻撃しに来なかったりと、今までの数ターンの攻防を見る限り、顕在的防御を持っている可能性はほとんどなかった。しかし万が一持っている場合も考え、レインジャーにはプレイしなかったのだ。俺はその光景に唸った。おすぎとは長年の友人ではあるがMTGを始めたのは自分の方が先で、デッキ構築にしろプレイングにしろ、ずっと自分が教える側だった。しかし、4月に開催されたBigMagicOpenでは、自分もシェアさせてもらった本大会でも使用中の自作のエスパーミッドレンジにより7勝3敗で終え32位入賞。大勝ちはしていないものの堅実に勝率を上げており、今まで大雑把な印象を受けるプレイが多いと感じていたが、自分でも手なりでレインジャーに撃ってしまいそうな場面で、冷静にライラを対象に取り顕在的防御のケアを忘れていない。

これが成長するということなんだな、と自分は感心していた。大災厄をかわせれば手札の数枚の除去呪文と合わせて勝利は目前だろう。今の堅実なプレイは試合後にしっかりと称えたい、おすぎが苗木トークンをデッキケースから探している間にそんなことを考えていた…しかし途中で自分の中である疑問が生まれた。それは「なぜおすぎは攻撃宣言時に菌類感染を唱えたのか」というものだった。

「苗木トークンで翡翠光のレインジャーをブロックします」

自分は最初何が起きたのかわからなかった。それは流れるような動きで、探し出された苗木トークンは翡翠光のレインジャーと垂直に交わっていた。

苗木トークンに4点が与えられ墓地に送られ、第2メインフェイズで唱えられる大災厄。その時見えた手札にはヴラスカの侮辱ともう一枚の菌類感染が。しかし、場に黒マナが出る土地は残っておらず、ライラはそのまま追放された。

第2メインフェイズで相手は残りのハンド1枚からそのまま造命師の動物記を唱えエンド。おすぎは返しのターン以降、能動的なアクションを引かずアドバンテージ差で負けていった。

今のは一体なんだったのだろうか。分は間違いなくこちらにあっただろう。緑単は黎明をもたらすものライラに触りづらく、戦場はライラでほとんど掌握した状態だった。レインジャーに攻撃される前のおすぎのライフは2回攻撃を行ったライラの絆魂により13。危険水域には程遠い。除去呪文もかわせた。かわせたはずだった。でもかわせなかった。見えていない顕在的防御のケアはできていた。しかし、見えている大災厄のケアはできていなかったのだ。

この時点でこのやらかし具合はツキ持ってかれるだろ…と思っていたが、Game3はおすぎが順当に回り相手がキランの真意号から後続引かずといった形で呆気なく勝利。準決勝の青白コントロールも相性差で勝ち、決勝は対戦相手の方が権利不要とのことでトスによる権利獲得。オイオイ優勝しちゃったよ…こんなんでいいのかよと思っていたがおすぎはこれがPPTQ優勝が初めてで喜びを噛み締めていたのでそっとすることに。一瞬感心しかけたの返してくれ。


コメント

しきみ
2018年5月21日17:47

稲荷ちっくな読ませる文章良かったです。
やっぱり師匠が上手いんだよなぁ…

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