昼から気をつけろ
プレリ当日では、身内でトレジャーを出すことなく、迎えた発売日。柏にはトレジャーを剥こうと開店時間からシャブ勢が集まっていた。

ぼく「てつさん(あとろさん)何パック買ったんすか?

てつさん「とりあえず3ボックス買った」
ぼく「流石だな……俺も1ボックス買おうかな。塩セット言われてるからトレジャーでなかったらきついっすね」
てつさん「『出なかったら』じゃねぇんだ。『出す』んだよ」

20ボックス以上剥き続けて青白フェッチfoilにたどり着いた男の言葉。パック剥きに関しては譲れないものがある。その言葉の重みを噛みしめながら、ぼくはてつさんとともに戦乱に臨んだ。

ビリビリ!シャシャ!パチパチ……ビリビリ!シャシャ!パチパチ……

ぼく「10パックくらい剥いたけどキオーラくらいしか出てないな……」

ビリビリ!シャシャ!パチパチ……ビリビリ!シャシャ!パチパチ……

ぼく「てつさん、なんかめぼしいの出ました?」

ビリビリ!シャシャ!パチパチ!

てつさん「トレジャーとかはでてないねー。よし、1ボックス終わった。次行くか」
ぼく「え……早っ」

ビリビリ(パックを剥く)!シャシャ(コモンの枚数が9枚であるか確認し、フォイルの封入を確認。「フォイルチャ~ンス」と心の中で唱え、少しだけゆっくりとフォイルのカードを確認する)!パチパチ(必要カードと不要カードを仕分ける)!

この作業工程を36パック分僅か15分足らずで完了し、高額カードが出なくともその心に揺らぎは見られない。しかし、次のボックスに対する気持ちは途切れていないのが見てとれる。

タルキール覇王譚は怪物を生み出してしまった。「フェッチfoilが出るまで帰れ9」が僕とてつさんの間で始まった当初、「いくらレアフォイルって言っても5種類あるカードのどれかが出ればいいから、わりとすぐ終わるだろう」「タルキール覇王譚はノーマルフェッチもでるから剥き得」と、呑気に話していたことも覚えている。しかし、晴れる屋くじS賞、GPTの上位賞、GPのサイドイベントの賞品、あまつさえ新セットの発売日(記憶が正しければ、運命再編の発売日に覇王譚半ボックス以上剥いていた)、剥き続けた。しかし、フェッチfoilは現れず、僕は負けを認める形でこの企画から脱落した。それでも、てつさんは幾度となく心を折られようとも(サグのやっかい者のfoilは3枚出た)、剥き続けた。

http://atrkud02.diarynote.jp/201506070314506239/


そして、覇王譚が発売された8ヵ月後、 遂に彼は到達したのである。(断っておくと、彼はフェッチをシングル買いしたことは一切ない)

発売日にフェッチfoilをすぐに剥いてしまえた人も沢山いただろう。しかし、彼はそういう人達の20倍、いやそれ以上の我慢を重ねて辿り着いたのだ。

あの時に比べたら、1ボックスを剥いて何も得られなくとも感情的になる筈もない。自然と次のボックスに手を伸ばしていく。

僕も残りのパックを剥いてしまわなければ、と思いつつペースを上げる。カスレアソートに心を削られる。

しかし、僕がカスレアと格闘してる最中、その瞬間はあまりにも、呆気なく訪れた。


てつさん「A R I D M E S A 」



出現した。青絡みではないものの、高額トレジャーの1枚だった。

てつさんおめでとう、おーすげー!、フェッチはやっぱ高いっすよねー!……そこにはてつさんを祝福するシャブ勢の姿が。仲間内で高額レアが出ると「堀内死ね!」「くれ!ケツ拭く紙にするから」「8円でよこせ!」と罵声が飛び交うイエサブだが、てつさんだからこそなのか、汚い言葉を浴びせるプレイヤーはそこには一人もいなかった(僕を除いて)。

みんなからの暖かい言葉をかけられる姿は、フェッチfoilを求めてパックを剥き続けた者に相応しいものだと感じた。タルキール覇王譚が生み出したパック剥きの怪物は、イエシャブパック剥きの覇王へと進化したのか。


てつさん「あれれー??まだトレジャーでてないんですか?」

自分にはお前を煽る権利がある、と言わんばかりに、トレジャーが出ていない僕を責めたてた。1ボックスが剥き終わった僕は、2ボックス目を剥くかかなり迷っていた。新スタンを作るのに、戦乱のゼンディカーのカードは余り使う予定はなく、シングル買いで済ませるのが遥かに安いと感じていた。しかし、このままやめてはてつさんに対して白旗を上げたことになる。買うか買わないか揺れていたが、カンにもう終わりか?と聞かれたら、まだ終わるわけにはいかない!と答えざるを得ない。

2ボックス目を追加で購入し、最初のパックを剥くと「灯の再覚醒、オブ・ニクシリス」。もう残りのパック要らないんじゃね……とか思いながらカスレアゾーンに突入。てつさんから勝ち誇った表情で「あれれー?光った土地がないよー??」と煽られ続け、世界を呪い始めた時だった。


ぼく「P O L L U T E D D E L T A」


最強が、現れたのだ。



てつさん「……」

ぼく「てつさんトレジャーでました」
てつさん「……ヨカッタネ」
ぼく「デルタっすね」
てつさん「……ソウダネ」
ぼく「やっぱ結構キレイっすね」
てつさん「……メサモキレイダヨ」
ぼく「青絡み……あれれー?メサの2倍っすかねー?」


てつさん「アア゛ア゛ァアア゛ァァァァァ!!!ナンデデルンダヨォォ!!!」


崩壊した。

てつさんがメサを出してから、僕がデルタを出すまで、その間はてつさんの天下だった。しかし、メサとデルタでは、歴然としていた。覇王譚によって鍛えた精神力は、ゼンディカーでは通用しなかったのだ。


その後残りのパックを開封し(デルタを確認しながら)、ウラモグのフォイルも追加して圧倒的な大差をつけて2ボックス目が終えた。アンザイくんからは「かまとらさんデルタ貸してくれよー!!クソしてケツ拭きたいからよー!!」、将軍ヵ原さんから「かまとらさん夜道とか気をつけないといけないっすねー(笑)」と言われ、そうっすねー、無事家に帰りたいっすねーなんて話したら、てつさんは僕に
「昼から気をつけろ!(肩パン)」
と言い放ったのだ。


(続く)


コメント

Zack
2015年10月4日18:22

やっぱりデルタfoilは麻薬なんですね

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